【書評】がい骨レストラン

怪談レストラン⑭がい骨レストラン
怪談レストラン編集委員会・責任編集 松谷みよ子
絵 かとうくみこ
2001年1月20日 第1刷発行
株式会社童心社

怪談レストランシリーズ全50巻あるうちの第14巻目、がい骨レストラン。
表紙には松葉杖をついた「左脚」のない骸骨が、骨付き肉片手に佇んでいる。海賊の装束に身を包み、左肩には黄色いオウムが乗っかっているその様は、彼が海賊の船長であることを想像するに容易い。
彼の名はがい骨船長。
本編を読み進めると分かるのだが、彼はかの有名な大海賊、ジョンシルバーであると考察できる。

目次

あらすじ

ようこそがい骨レストランへ

怪談レストラン編集委員会 [2001]『がい骨レストラン(怪談レストラン)』 p.3

丘の上に建てられた海賊船を思わせる帆船の形をした当レストラン、庭には何者かの生物の骨、骨できた柵、骨のアーチ、骨骨骨、そう、このレストランには「骨」にまつわる何かがありそうだ。
読者はゲストとなり、当レストランでお料理(お話)をいただくのである。
作品は全13話のオムニバス形式で描かれ、内3話はがい骨レストランに関する話、内10話は広義のホラーに関する話で構成されている。「骨」に関する話が多めの印象。p4-5 レストランのメニューを模した目次が非常に面白い。

メニュー

最初のおはなし がい骨レストランのできたわけ (松谷みよ子)

骨のスープ、よいこらラム酒もありやすぜ!

怪談レストラン編集委員会 [2001] 『がい骨レストラン(怪談レストラン)』p.13

「宝島」「ピーターパン」の愛読者の夫婦が抱く海賊に対する憧れによって、当レストランは建てられた。途中、海賊レストランというネーミングが平凡ということで、がい骨レストランに至るやり取りが見られるが、そのネーミングでは、余計「平凡」になってしまってるような気がしないでもない。
料理が大の得意である大海賊ジョンシルバーに憧れた男が、実際海賊にはなれないので、料理人になるというくだりは、かなりしっくりくるものがあった。「ワンピース」でいうと、シルバーズレイリーと赤脚のゼフが思い出される(笑)

おきもののおはなし ジョン・シルバーがいた… (松谷みよ子)

ロビーに入ると、ざーっ、ざーっ、という波の音にまじって、海賊のうたう、へい、ラム酒が一本だ、という歌声がきこえてきました。

怪談レストラン編集委員会 [2001] 『がい骨レストラン(怪談レストラン)』p.15

この話はおそらく「がい骨船長」がジョンシルバーであることを示唆しているのではなかろうか。僕が子供の頃読んだときは、いまいちピンと来なかったが。また、後から知ったのだが、海賊ジョン・シルバーの肩に乗ったオウムが「ピース・オブ・エイト!」と叫ぶのはお決まりのようだ。

理科室のがい骨 (常光徹)

さっき、おれをかたづけるのをわすれただろう

怪談レストラン編集委員会 [2001] 『がい骨レストラン(怪談レストラン)』p.26

凄みを効かせた骸骨のラストシーンのセリフにはどこか可愛げがあって面白い印象があった。太一と哲也には「いや、自分で動けるなら自分で元の位置に戻れよ」と突っ込むくらいの胆力を養ってもらいたいと思った。

山小屋のがい骨 (宮川ひろ)

またひとつ、ひみつの温泉をみつけたぞ

怪談レストラン編集委員会 [2001] 『がい骨レストラン(怪談レストラン)』p.32

縦縞の着物の女はなぜ男を歓迎したのだろうか。この一件の後男が寝込んだことは、彼が女が出した料理を口にしたこと、温泉に入ったことが直接の原因になっているとは、考えにくいと思ってしまう。根拠はないのだが。つまりは女の言動に悪意を感じなかったと言うことだ。

聖地にいくがい骨たち (剣持弘子)

どうか、ペストから、わたしと、お城の中の人びとをおたすけください。

怪談レストラン編集委員会 [2001] 『がい骨レストラン(怪談レストラン)』p.43

マリア様との約束を反故にした城主と、城の人間がペストにかかってしまったわけだが、ここで出てくるマリア様というのは実は死神で、城主は死神と契約を結んだのではないかと思われる。
死んで骸骨になってしまったものたちが、聖地巡礼とは不気味なものである。まさに死神から本物のマリア様への狡猾な嫌がらといえよう。

三千体のがい骨 (望月正子)

ほんとに、しらないっていうのも、罪ね。
わすれてしまうのも、罪。

怪談レストラン編集委員会 [2001] 『がい骨レストラン(怪談レストラン)』p.63

お互いがしてしまったことを反省し、忘れてはいけない。と言うことは当然ではあるが、それを理由に今の人間たちを叩き、国際関係の好材料とすることは、きっと違う。

マーラと大男 (八百板洋子)

ごめんなさい。おとうさんが病気なの。ちょっとだけ、草をわけてください

怪談レストラン編集委員会 [2001] 『がい骨レストラン(怪談レストラン)』p.70

どこか血生臭い話。
大男に出された人肉料理をぺろっと食べたマーラの愛猫のお腹が心配ではあるが、本作のMVPは間違いなくこの黒猫であろう。大男が村に再来しないことを、ただただ祈る。

どくろの赤い舌 (水谷章三)

読経の主は、これか

怪談レストラン編集委員会 [2001] 『がい骨レストラン(怪談レストラン)』p.85

この話はかなり鮮明に覚えていた。本作は、月明かりだけが頼りの山の中で野宿すると言うことを考えただけでも恐ろしいが、それに相まって何やら読経が聞こえてくるという想像すると非常に恐ろしい仕上がりとなっている。
修行僧が見つけた頭蓋骨の中に「舌」が残っていると言うのも鮮烈であった。読経を全て終えた後で消えたそれを鑑みると、この舌は実態を伴わない幻であったと推測できる。逆に実体として舌が残るよりも、こちらの方が妙にリアルで怖さが引き立っている。

こわーい学校 (松谷みよ子)

ずっとむかし。
山おくにお寺があったんだと。

怪談レストラン編集委員会 [2001] 『がい骨レストラン(怪談レストラン)』p.89

こちらは原作版より、アニメ版の方が記憶に残っている。典型的な怪異譚であるといえる。
鬼たちが生活する世界は、主体が鬼であるだけで、その他は人間の生活と瓜二つであり「赤い紙、青い紙」などの怪談も盛り込まれている点が興味深い。
よんつこもんつこ さけた
と言う独特な終わり方はめでたしめでたしの意であり、主に宮城県で展開される民話の結びとして使われるらしい。と考えるとこのお話の舞台は宮城県なのだろうか。

ビノリー川 (岩倉千春)

さようなら 王さま なつかしいおとうさま
さようなら おきさきさま やさしいおかあさま
さようなら わたしのいとしい恋人
わざわいふりかかれ わたしのおねえさまに

怪談レストラン編集委員会 [2001] 『がい骨レストラン(怪談レストラン)』p.105

よくある殺された者が、殺した者を暴くことによってその恨みを晴らす系の話である。
死んだ妹の身体を使ってハープを作り出すハープ弾きもなかなかではあるが、昔は哀悼の意を込めて、生き物の骨や毛を使って何かを作ると言うことが行われていたのだろうか。

樹海の夜 (小沢清子)

もう、どんなことがあっても、ぜったいに自殺なんかしません。

怪談レストラン編集委員会 [2001] 『がい骨レストラン(怪談レストラン)』p.118

最近流行りの「サ活」。あれはサウナに入って汗を流すことで自律神経が整い、程よい脱力感に包まれ、疲労回復を促すわけだが、「ホラー作品に触れる」ことも一種のサ活といえそうだ。
自殺の仕組みとして「恐怖」を感じる心が麻痺する事で、死への恐怖に鈍感になり、その一歩を踏み込んでしまうのだ。本作の主人公もまさにそれであった。しかし樹海に揺蕩う骸骨を見た途端、彼の失われていた「恐怖」が沸き立ち、彼は自殺を止めることができたのだ。
僕もホラー作品の消費者として、作品に触れることで、「恐怖」を感じる心を大事にしていきたいものだ。

デザート ガマの中の人骨 (望月新三郎)

まさしく、おばさんの遺品と遺骨だったのだ。

怪談レストラン編集委員会 [2001] 『がい骨レストラン(怪談レストラン)』p.125

家族が見つけたアルミの水筒は当時の戦争の凄惨な事実をまるまる残していると言えるだろう。思うに、人は死ぬと、人の手で火葬なり土葬なりの手段をふみ、世間から隠されるが、何等かの理由によってそれが叶わなかった場合、人体は腐り、やがて骨だけになる。そういう意味で、「骸骨」というのはどこか孤独で、哀しい概念を背負っていると言える。

最後のおはなし がい骨レストラン、ふくびきの巻 (松谷みよ子)

だって世の中に、本ほどすてきなものはないからです。

怪談レストラン編集委員会 [2001] 『がい骨レストラン(怪談レストラン)』p.135

その不似合いな福引の一等賞は、頭蓋骨でも、金銀財宝でも、ピストルでもなく、2冊の本であった。がい骨船長のいかつさとは対照的な、素敵な幕引きである。

まとめ

僕の海賊に関する最古の思い出といえば、「かいぞくポケットシリーズ」だ。
子供の頃買ってもらった第1巻 「かいぞくポケットシリーズ① なぞのたから島」を擦り切れるまで読んだのを覚えている。しかしなぜか続編は買ってもらえず、その一冊を繰り返し読んでいた。自分と同じ子供であるポケットがある日突然海賊になり、ジャン、ケン、ポンという三人の仲間と、猫のアイコと大海原を冒険する物語は、子供ながらに刺激的で夢中になった。また、ちょいちょい出て来る呪文?のような言葉の詠唱を読者にも求めてくるメタ要素が、当時何とも不思議な読後感を生み出した。

また、東京ディズニーランドのカリブの海賊のアトラクションや、ジャンプで今もなお連載を続けている「ワンピース」などにも多くの思い出がある。いずれも、誰かがつくった「海賊作品」を堪能しているだけで、実在した海賊に歴史的アプローチをしたことがないわけだが、「海賊」という概念はこれからも、知ってるようで知らない枠の代表として、僕の脳裏に残っていくことだろう。


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