【書評】お化け屋敷レストラン

怪談レストラン⑩お化け屋敷レストラン
怪談レストラン編集委員会・責任編集 松谷みよ子
絵 たかいよしかず
1998年2月25日 第1刷発行
株式会社童心社

怪談レストランシリーズ全50巻あるうちの第10巻目、お化け屋敷レストラン。
表紙にはコック帽をかぶった一つ目のお化けが描かれている。彼はこのレストランのシェフなのだろう。今まさに料理を作ってる最中のようだ。髑髏の絵が描かれている大きなボールに入った「具材」をホイッパーで一生懸命に混ぜている。その「具材」をよく見ると…人間の目、鼻、口、耳…「料理の鉄人」を自称する彼はいったい何を作ろうとしているのだろうか。
彼の名は一つ目シェフ。
お化け屋敷レストランのオーナー兼シェフといったところである。
本作には、なんと怪談レストラン史上初、巻末に特別付録として、「一つ目シェフのおばけ料理こんだて集」がついている。どの料理もおいしそう(笑)だが、ゴキブリやネズミが食卓をうろちょろしてるのは良くないと思う次第である。

目次

あらすじ

ようこそ お化け屋敷レストランへ

怪談レストラン編集委員会 [1998]『お化け屋敷レストラン(怪談レストラン)』p.2

お化け屋敷レストランの外装はどこか「幽霊屋敷レストラン」に似たものがある。洋風な造りではあるが、竹が生えていたり、日本の墓石が置いてあったり、「ゲゲゲの鬼太郎」に出てくる妖怪ポストのようなものも見受けられる。そして、その周りには明らかに「お化け」たちがたくさんたむろしている。きっと彼らお化けたちにとって、ここは天国のように落ち着く場所なのだろう。そしてよく見ると…お化けギャルソンが!

読者はゲストとなり、当レストランでお料理(お話)をいただくのである。
作品は全13話のオムニバス形式で描かれ、内3話はお化け屋敷レストランに関する話、内10話は広義のホラーに関する話で構成されている。「お化け(屋敷)」に関する話が多めの印象。p4-5 レストランのメニューを模した目次が非常に面白い。よくよく見るとここにもお化けギャルソンがいる。さすが怪談レストランの顔、他レストランにもちょくちょくと現れる彼はキュートである。

メニュー

最初のおはなし お化け屋敷レストランができたわけ

ここは遊園地の中でしょ。ずっとまえ、この場所には「お化け屋敷」があったんですよ。そのあとにできたから、「お化け屋敷レストラン」。ね、かんたんでしょ。

怪談レストラン編集委員会 [1998]『お化け屋敷レストラン(怪談レストラン)』 p.7

おそらく今までの「レストランができた理由」系の話の中で一番シンプルな話といえる。遊園地の中のお化け屋敷がそのままレストランになったというから驚きだ。しかも、話者の話し方からして、この遊園地は通常営業しているようだ。そして、この遊園地には「ミステリーゾーン」というどこか懐かしい名前の「お化け屋敷」がある。旧お化け屋敷をレストランにするから、新しいお化け屋敷としてミステリーゾーンを作ったのだろうか。そして気になるのはその理由だが、まさか住み着いたお化けたちの意向というわけではあるまい笑

おきもののおはなし ご案内いたします

いらっしゃいませ。お席にご案内いたします

怪談レストラン編集委員会 [1998]『お化け屋敷レストラン(怪談レストラン)』p.17

ゲストをロビーで少し待たせた後で、そこに置かれた木製の棺桶から、ろくろ首のウエイトレスが現れるプチサプライズ、マリリンモンローのようにお尻をふりふりするろくろ首は考えただけでかわいらしい。きっと彼女はこの店の看板娘なのだろう。

お化け屋敷のガイコツは

いいですとも。ちょうど理科室におくガイコツを、ほしがっている学校がありますから

怪談レストラン編集委員会 [1998]『お化け屋敷レストラン(怪談レストラン)』p.30

お化け屋敷で使っているガイコツを、「人骨」と分かっていながら、うすらとぼけて学校に転売しようとしている修理屋はサイコパスそのものである。ひょっとしたら、あまりにも立派なガイコツのオブジェだったことから、彼は「人骨」と嘘をついている可能性も無きにしも非ずではある。いずれにしてもガイコツが動いているのは事実なので、これが売られた学校では間違いなく「動くガイコツ」としてその「学校七不思議」を塗り替えるであろう。

お化け屋敷でプリクラ

フレームは、かわいい火の玉でいいわね

怪談レストラン編集委員会 [1998]『お化け屋敷レストラン(怪談レストラン)』p.40

お化け屋敷の中に、プリクラ機があるのも面白いし、お化けと一緒にプリクラを撮るのも面白い。何もかもが諧謔的に描かれていると思いきや、最後の挿絵でゾーっとする。しかしよく考えてみたら、これもお化け屋敷プリクラの「一緒に撮ったお化けの特徴スキン」のようなサービスの一種であるとしたら、やっぱり、面白い。僕は河童ときゅうりをかじりながら、頭にお皿のようなものを載せて撮りたい、そう思いましたとさ。

お化け屋敷

お化け屋敷、おもしろいよきっと。いこういこう。ねえ、いこうよ

怪談レストラン編集委員会 [1998]『お化け屋敷レストラン(怪談レストラン)』p.46

まさかの「母」がターゲットにされる話である。本作は敢えて「母」をターゲットとすることで、子供読者が感じる怖さを倍増させる効果があると思われる。それは子供の、大人は「お化け云々」を信じていないことから、その渦中に巻き込まれることはないという漠然とした認識から、いざとなったら彼ら大人が僕たち子供を助けてくれるという考えを崩しているからである。
実際この類似演出として、お化け屋敷の出口を抜けた後で、わ!と驚かされたりするお化け屋敷もあるそうだ。人の「安心」をぶち壊す、いじわるで粋な演出である。
ところで、太郎ちゃんはどこにいってしまったのだろうか。

のっぺらぼう

おやまあ、それって、こんな顔でしたか

怪談レストラン編集委員会 [1998]『お化け屋敷レストラン(怪談レストラン)』p.60

典型的な再度の怪の話だ。恐怖の緩急がいい味を出している。

ひとつ目の鬼

E!!

怪談レストラン編集委員会 [1998]『お化け屋敷レストラン(怪談レストラン)』p.65

まさかの結構グロテスクな話である。鬼が男の弟に化けてまで男の命を狙った理由はいまいち判然としないが、なかなか執念深い鬼である。そして、橋の欄干にいた女と鬼の関係性も不明である。

お化け塾

きみたちが夢をみたっていうきのうの夜はよ、その大空襲のあった三月十日なんだよ

怪談レストラン編集委員会 [1998]『お化け屋敷レストラン(怪談レストラン)』p.87

戦争の空襲の、哀しい記憶が場所に残っていたのだろう。子供たちの未来に戦争がないことを祈る。

おどる幽霊

ドロン ドロン ドロン
朝ごとなるのは教会の鐘
朝ごとなくのはカリアリのおんんどり
おいらはこの世の者じゃない
右手をおだし、右手をおだし

怪談レストラン編集委員会 [1998]『お化け屋敷レストラン(怪談レストラン)』p.93

死者と生者が仲良く踊る舞踏会かと思いきや、彼ら死者につかまったら、殺されてしまうという生々しい話である。彼らが口ずさむ歌が独特で頭に残る。右手を出していたらどうなっていたのか、ずたずたに引き裂かれた上着を思うと恐ろしい。

話をひとつもしらなかった男

わしは毎晩、三分の一はたべたりのんだり、三分の一は話をしたりうたったり、三分の一はねむってすごすときめている。

怪談レストラン編集委員会 [1998]『お化け屋敷レストラン(怪談レストラン)』p.102

とても不思議な話だ。魔法のようなものを使うおじいさんも不思議だが、「ひげを焦がした」と怒る「骨付き肉」はもっと不思議だ。ローリーは「話をひとつもしらなかった」ことから一度はおじいさんの家を追い出される。これはどういうことだろうか。何一つとして人に話すようなことがないローリーの退屈な人生を、ひいてはこの時代に生きる人間が抱える「人生」に対する「面白みのなさ」の風刺だろうか。

吸血鬼になったルナ

うまれたときから歯があるなんて…

怪談レストラン編集委員会 [1998]『お化け屋敷レストラン(怪談レストラン)』p.109

ルナの死後とりおこなった洗礼で、牙などがなくなり、棺にもどったルナを見るに、吸血鬼として飛び回っていたルナには何者かが憑りついていたと考えられる。出産した時にはすでにルナに牙が生えていたことから、胎内で憑りつかれた可能性が高いが、母体には何の影響もなかったのか気になる所ではある。

デザート 電気じかけの手首

それにしても、うごく手首は、さいこうにうけたな

怪談レストラン編集委員会 [1998]『お化け屋敷レストラン(怪談レストラン)』p.122

電気仕掛けの手首のオブジェが電気なくして動いてしまう話。花金中学二年三組の男子たちは、物に命を宿すアーティストだと言える。

最後のおはなし 糸のような、ガラスのような

わたしたち、拒食症のガイコツです

怪談レストラン編集委員会 [1998]『お化け屋敷レストラン(怪談レストラン)』p.134

たくさん食べて、大きくなってほしいという子供向けのメッセージだろうか。
不思議と、嫌悪感はない。

まとめ

皆さんは歩いていくタイプのお化け屋敷と、乗り物に乗ってめぐるタイプのお化け屋敷、映像や、音声を聞いて楽しむタイプのお化け屋敷、どれが好きですか?
僕は断然歩くタイプですね。あれは自分の足で進まないと永遠に終わらないという試練的な要素があるから好きです。置いてあるオブジェとか、よ~く観察できるし、お化けに扮したスタッフの頑張りも間近で楽しめるので、最高ですね。うんうん。



(成人すぎて男友達と入ったナンジャタウンのお化け屋敷で、僕はずっと友達の背負うリュックにしがみつき、始終瞼をかたく閉じていたというのはここだけの話ですが)


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