【書評】恐之本弐-高港基資ホラー傑作選集

恐之本弐-高港基資ホラー傑作選集
高港基資
2013年2月7日 初版発行
少年画報社(SGコミックス)

前回に引き続き、恐之本の書評を記載する。
本作「恐之本弐」には「人間臭さ」が溢れている。
自分のエゴで殺人を犯す者、たまたま関わりのできた人間を執拗に追いかけ襲う怪異、怪異に乱暴をする人間、虐待をする父親など、人間の嫌な部分を沢山みることができる作品集となっている。
そういう部分が現代社会の怪異を成す根幹であることは、間違いないだろう。

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目次

書評

ゆきをんな

恐ろしいほど冷たい笑い顔だった
見てるだけで魂まで凍るような笑い顔だった

高港基資 [2013] 『恐之本弐-高港基資ホラー傑作選集』 p.24

女子大生が言っていた「卒業のやばい子」という言葉が「卒業できそうになく留年しそうな子」を指していることになかなか気づけなかった。
完全なヒトコワ作品であるが、大学側も大学側で、なぜこのようなボランティアを企画したのだろうか。この炊き出しボランティアは連日行われ、参加した女子大生は、最終日、「大学側」が選んだホームレスの人と一日を共にするらしい。僕の脳内ではその一部始終を撮影し、あとでそれを鑑賞しブランデーを嗜むアカデミック変態教授が浮かんで離れなくなってしまった。
おとぎ話の雪女を社会問題渦巻くステージで現代化した作品であると言える。

痒み

痒くて狂いそうよ

高港基資 [2013] 『恐之本弐-高港基資ホラー傑作選集』 p.47

当初はヒトコワだと思ったが、首の骨が折れて、ぶらんぶらんとしながらも生きているこの女は間違いなく怪異である。モテていたころに患った性病が原因で周りの人間が離れ、身体中の痒みに耐えられなくなって自殺した女の怨念の仕業と言ったところだろうか。「首が折れる」ような方法で命を落としたと推測できる。
痒がる女性にこれほど恐怖を覚えたのは、「ひぐらしのなく頃に」と、この作品くらいである。

ミズ

そしてお兄さんの遺体の肺には
大量のヒトの毛髪が詰まっていたのです

高港基資 [2013] 『恐之本弐-高港基資ホラー傑作選集』 p.74

話としては怪異を目撃した人間達が、それらの怪異に殺されてしまうというもので、その理由や怪異の正体が明かされることはない。
エスキモーロールの最中に怪異を登場させるという絵が、とても秀逸だ。怪異はさかさまに映り、顔を視認できないため、カヌーに乗らない人でも十分に妄想が進み、恐怖を感じることができる。
怪異が三人のあとについてくる描写も王道ではあるが、中々怖い。

ウシロノショウメン

呪いや祟りは地雷と同じだ
踏めばやられる

高港基資 [2013] 『恐之本弐-高港基資ホラー傑作選集』 p.100

顔を何回も刺されて死んだ女には同情するが、その茶番に人間を巻き込む点は腑に落ちない。そして、男の霊が祓われたことで、憎しみの矛先を失った女の霊が再び現れるという現象も、自分勝手すぎてしんどくなってくる。

二人部屋病室

みたらご飯がマズクなるわよ

高港基資 [2013] 『恐之本弐-高港基資ホラー傑作選集』 p.113

これもヒトコワに当たる話だが、自分で車を煽って事故を起こし、病室で話し相手になってくれた青年を、ひき逃げの犯人と決めつけ復讐をするというある意味恐ろしい話。そんなややこしい奴が病室の隣で寝ているのだから青年もさぞ寝不足であったことだろう。

森を壊した男

ハァクショオッ

高港基資 [2013] 『恐之本弐-高港基資ホラー傑作選集』 p.128

所謂山の祟り系の話だ。
勢いで自らの鼻を切断してしまった社長であったが、結局工事を終了するハメになったのだから、鼻を失い損である。鼻を切り落とした後のくしゃみの描写はリアルであり、目を覆った。
そして、食事中に嫁に花粉症の薬を買いに行かせる社長を見るに、ワンマン経営ブラック企業であることは想像にたやすいので、こういう会社では働きたくないなと感じた。

ウミヂ

ひやははっ
これ
乳やんけっ

高港基資 [2013] 『恐之本弐-高港基資ホラー傑作選集』 p.154

海岸に打ち上げられる「乳房」、夜な夜なそれを吸う「アザラシのようなもの」、海面に現れる「巨大なおじいさんの顔」…それらの要素の関連性が読めないが、どことなく、諧謔的で面白い作品である。
「海乳」という言葉のセンスが光っている。

くさわら

おにいちゃん
待ってよぉ

高港基資 [2013] 『恐之本弐-高港基資ホラー傑作選集』 p.183

最後どうなったか、がよくわからない作品だ。
僕にも妹がいるので、恵介の気持ちはとてもよく分かる。幼いころ、どこに遊びに行くにもついてきた妹であったが、まだ小さかったために、面倒を見なければならず、それがとても嫌だった。
しかし最近、そんな妹が結婚をした。結婚式で見るその姿には、あの頃の幼さは微塵も感じられず、それもそれで、どこか寂しいと思ったものだ。

声が聞こえる

なーんだ
いつもの”天井の人”か

高港基資 [2013] 『恐之本弐-高港基資ホラー傑作選集』 p.200

窓の外の女、兵隊さん、天井に張り付くもの、ただでさえこの病院にはたくさんの怪異が存在している。語り手の看護師もそのうちの一つであったというオチだが、なかなかガチャガチャしている。登場する怪異や病院の設定が、その原因になっているのかいないのか、判然としない。
醜悪な見た目になっても、消えることのできない怪異というのも、どこか哀しいものである。

悲しい音

生霊
どこかで虐待にあっている子供の身体から霊が抜け出て助けを求めてるのかもな…

高港基資 [2013] 『恐之本弐-高港基資ホラー傑作選集』 p.239

誰もいない家の固定電話に電話をして、誰かがでるという構成はとても怖い。イエデンがなくなりつつある時代を生きる現代っ子には、この恐怖はわからないかもしれないが。
この話は今作の作品群の中で一番好きな話だ。本来はこういった所謂「哀しいお話」に心を打たれることはあまりないのだが、主人公が凄惨な虐待の現場を追体験すると言う点が良かった。その中で彼が犯人である父親を退治したことで、死してなお、永遠に繰り返される虐待の幻から少年は救われたのだ。

まとめ

この巻の表紙、良すぎん!?
人がまるでお洗濯もののように干されてらぁ。
割烹着と血液も、ホラー相性抜群ですしね。


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