生き屏風
田辺青蛙
2008年10月25日 初版発行
角川書店(角川ホラー文庫)
本作は僕が角川ホラー大賞作を集めているときに、出会った作品だ。
当時、ホラー作品に対して刺激の強さを求めていた僕にとって、この作品は少し甘口だなぁと思ったのを覚えている。しかし再読してみると、なるほどメインキャラクターである二人の会話の中から読み取れる世界観に、どこかほっとするような日常系ホラーの源流を見ることができた。また、1994年から脈々と続く受賞作品の中において、本作のような作品はなかったため、新鮮であった。
今作は表題作「生き屏風」のほか「猫雪」「狐妖の宴」を収録している。書評としては「生き屏風」のみ記述しようと思う。
第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品。
あらすじ
一昨年うちの旦那様の奥方が亡くなられたのですが、その霊が店の屏風に憑いたのか、夏の頃になると屏風から奥方が喋るんです。
田辺青蛙 [2008] 『生き屏風』 p.8
県境に住む妖鬼である皐月が「屏風に憑いた奥方の霊の相手」という風変りな仕事を請ける。
いつしか皐月と奥方は打ち解け合い、親しくなっていく。そんな矢先、奥方は「海に行きたい」と皐月にお願いをするが。
書評
何故だい?あんたの雇い主の願いだよ。死んでしまったあたしが言うのも何だけど、一生一度の、最後のお願いだから聞いておくれ
田辺青蛙 [2008] 『生き屏風』 p.84
人に育てられた鬼の父をもつ妖怪と、もともと人であった妖怪のやりとりは、奇妙でありながら、どこか心が温まる仕上がりとなっている。皐月が語る両親の話や妖怪の話、奥方の変化していく人柄、屋敷の旦那の都合など、様々な要素絡み合い構成される独特な世界感は、「圧巻」というよりは「枯淡」というか、あっさりさの中に赴きを感じる。
しっかり出汁をとった塩ラーメンのような感じだ。
きっと、奥方が言った「海を見たことがない」というのはおそらく嘘であろう。
それは、自ら海の藻屑となりたいという本懐を皐月に打ち明けてしまうと、それが叶わないだろうということを、奥方は理解していたからだ。つまり、皐月と奥方にはそれほどの間主観的な関係が構築されているということを、奥方自身も認識していたのである。それくらい、彼女にとって皐月との時間は楽しいものだったのだろう。物語の最後、県境の皐月の家にて、再び舞い戻ってきた奥方と皐月が酒を酌み交わし談笑するシーンに、思わずにやりとしてしまった。
本作には、「魂追い」という続編があるらしい。ぜひ読んでみたいと思った。
最後に、皐月の可愛いポイント第一位を挙げて終わろうと思う。
それは以前奥方に話した妖怪「スイトン」を模した置物を木片で作ってしまうところである。
まとめ
「馬の首の中で眠る」その寝心地や如何に。
僕の身体に、原因不明の腰痛が発現してから早二年。鍼治療やマッサージ、運動やストレッチ、色々試したが、中々効果が表れない。我慢できないほどの痛みではなく、鈍痛のような、違和感のようなものが僕の腰部で蠢いている。しかし最近、ある悩みが具体性を増してきた。それは、腰痛が原因で寝つきが悪いということである。仰向けはもちろん、横向き、うつ伏せ、どんな体勢でも、腰の違和感が気になりなかなか寝付けないのだ。
困った僕は、テンピュールのマットレスを使ったり、マッサージグッズで腰痛箇所をぐりぐりやったりした。しかしそれでもなお、腰痛は僕を苦しめ、心地よい眠りは僕からより遠ざかっていくのだ。
さて、そんな僕が気になったのは「馬の首の中」だ。
「馬の首の中で眠る」その寝心地や如何に。


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