【考察】近畿地方のある場所について

近畿地方のある場所について_書影

近畿地方のある場所について
背筋
2023年8月23日 初版発行
KADOKAWA

昨今のモキュメンタリーブームの台頭は目覚ましく、様々な書籍、映像作品など、ホラー界隈を席巻している。
創作だと分かった上で作品に触れるものの、心のどこかで、この作品は実際に起きた事件を基に描かれているのではないか、もしかしたら、本当にあった事なのではないか、などと皆が現実との界面を意識することで、恐怖は増幅する。
作中様々な出来事が交錯し、謎解き、推理的側面をもつことや考察可能性の幅が広い事も非常に魅力的と言える。

背筋作品で初めて読んだのは、「口に関するアンケート」である。妄想を掻き立てる筆致に恐怖したものである。またどこかでこちらの方の作品の書評も書きたいと思う。そののち、本作品「近畿地方のある場所について」を手に取ったのである。
率直な所感として、久しぶりに本を読んで怖いと感じた。ぞわぞわ感を掻き立てるのがうまく、次々と出てくる資料を無我夢中で読んだ。

今回はそんな「近畿地方のある場所について」考察に重きを置きながら、記述しようと思う。
大いにネタバレを含むので、この記事を読まれる際は注意願いたい。

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目次

あらすじ

私の友人が消息を絶ってしまいました。
その情報を提供していただきたいのです。

背筋 [2023] 『近畿地方のある場所について』 p.18

背筋は東京でライターをしている。
主なジャンルはオカルトで、まれに怪談イベントの構成を担当したりする。
この分野で20年書き続けてきたが、中々にニッチな分野ではあるため、最近ではグルメやギャンブルなど、ジャンルを問わずに仕事を請け生活をしている。

背筋の友人、出版社でオカルト雑誌を担当している小沢が失踪した。

我々読者は、失踪前に小沢が記事にしようと熱心に調べていた「近畿地方のある場所について」関連する様々な資料を、読み進めていくことになる。

考察

!!! 下記ネタバレを含みます !!!

近畿地方のある場所の図

物語の舞台である、「近畿地方のある場所について」の地図を下記にまとめた。
なお、細かい配置箇所は予測不能の為、無作為に配置した事留意願いたい。

近畿地方のある場所について_地図

作中の出来事の時系列整理

作中の出来事を時系列に沿ってまとめた。
実際に起きたことをベースに記述し、所感等は脚注にまとめた。

明治時代よりも以前 ●●●●●の山に神社建立 1

天から舞い降りた鬼を鎮める為に、神社建立。

背筋 [2023] 『『近畿地方のある場所について』 5』 p.329
背筋 [2023] 『神社由緒看板』 p.327

明治時代 ●●●●●のまさるという男

まさるは村八分にされ、近所の女性の頭を大きな石でかち割り殺害する。
女性の旦那と若い衆がまさるを滅多打ちにする。
半殺しにされたまさるは自らその石に頭を打ち付け自殺。
その死に顔は大きな口を開けていて壮絶であった。
山の林にまさるが埋葬されその上に例の石が載せられる。
それから、村の女性がその石に頭を打ち付け何人も自殺する。
まさるの祟りとして恐れられ神社を急ごしらえで作り、祠にしめ縄をまいた石を祀る。
村の人間はその石に柿や人形を供える。2

背筋 [2023] 『『近畿地方のある場所について』 5』 p.329

1950年代半ば ●●●●●の山の西側にダム建設

このダムはダム同様あまり特徴があるわけではないが、自殺の名所として有名であった。

背筋 [2023] 『某月刊誌 2010年5月号掲載 短編「心霊写真」』 p.177

1984年1月 Kちゃん3の父方の叔父Mさんが●●●●●にあるダムに派遣される

Mさんの勤める施工管理会社で管理するダムにこのダムが含まれていた。

背筋 [2023] 『某週刊誌 1989年3月14日号掲載 「実録!奈良県行方不明少女に新事実か?」』 p.9

1984年2月 Kちゃん行方不明になる

奈良県在住Kちゃんが同級生であるYちゃん、Eちゃんと共に下校中、行方不明となる。
Kちゃんの自宅は住宅地の袋小路内、袋小路を曲がって40mほどのところにある。
袋小路入口までYちゃん、Eちゃんと一緒であった為、Kちゃんが消息を絶ったのは、その40mの間である可能性が高い。4

背筋 [2023] 『某週刊誌 1989年3月14日号掲載 「実録!奈良県行方不明少女に新事実か?」』 p.9

下記、Kちゃん宅付近の地図である。
なお、細かい配置箇所は予測不能の為、無作為に配置した事留意願いたい。。

Kちゃん宅付近図

1984年4月 Kちゃんの父方の叔父Mさん自殺

Mさん自殺の際、遺書などは見つかっていない。

背筋 [2023] 『某週刊誌 1989年3月14日号掲載 「実録!奈良県行方不明少女に新事実か?」』 p.9

1985年 ●●●●●の西側ダム付近にオートキャンプ場設立

ダムが近い山のふもとに位置し、軽いハイキングなども楽しめる。

背筋 [2023] 『某月刊誌 1998年5月号掲載 「新種UMA ホワイトマンを発見!」』 p.147

1987年 ●●●●●の山の東側にマンション建設

Aさん(マンション設立時居住者)一家がマンションに住み始める。
Aさんと会社員の夫、10歳になる娘のBちゃん、猫の3人と1匹暮らし。
Bちゃんが奇怪な行動を起こすようになる。
Bちゃんの小学校でまっしろさんという遊びが流行する。
Bちゃんが、猫を花瓶で殴打し、深夜に生贄として猫を捧げに出かける。5

背筋 [2023] 『某月刊誌 1993年8月号掲載 「まっしろさん」』 p.33

1988年7月13日 『TVの力~行方不明者捜索スペシャル~』放送

アメリカの霊能者が霊視でKちゃん(行方不明者)の居場所特定を試みる。
結果はKちゃんは生きてもいなければ死んでもいない。6

背筋 [2023] 『某週刊誌 1989年3月14日号掲載 「実録!奈良県行方不明少女に新事実か?」』 p.9

1989年3月14日 某週刊誌 1989年3月14日号掲載 「実録!奈良県行方不明少女に新事実か?」

前回の本件特集掲載以降、多くの読者より情報が集まる。
長距離トラック運転手Iさんが、深夜3時くらいに●●●●●をトラックで走っていた時
山とダムの間の国道にて、ランドセルを背負ったKちゃん(行方不明者)を見つける。
服装は行方不明当時ののままであった。

背筋 [2023] 『某週刊誌 1989年3月14日号掲載 「実録!奈良県行方不明少女に新事実か?」』 p.9

1991年 新興宗教「スピリチュアルスペース」設立

信仰対象は宇宙。●●●●●の山の西側に本部を構え、女性信者のみで構成される。
男性でも布教活動であれば行うことができる。
信者はみな高みを目指す。高みへいくと「宇宙の真理を得る」ことができる。7

背筋 [2023] 『某月刊誌 2000年8月号掲載 「辺境で見た異端、カルト教団潜入レポート」』 p.291

1992年秋 鳥取在住大手企業に勤めるHさん(当時29)、妻Yさん、子供M(当時6)君とキャンプへ

Yさんがダムを挟んだ向かいの山から視線を感じる。
聞いていたラジオがおかしくなる。
家族で作ったカレーの味がしなかった。M君が鼻血を出す。
展望台の双眼鏡で山にいる何か白くて巨大なものを目撃する。8

背筋 [2023] 『某月刊誌 1998年5月号掲載 「新種UMA ホワイトマンを発見!」』 p.147

1993年8月 某月刊誌 1993年8月号掲載 「まっしろさん」

Aさん(マンション設立時居住者)一家についての記載。

背筋 [2023] 『某月刊誌 1993年8月号掲載 「まっしろさん」』 p.33

1996年 ●●●●●のカルト教団として、月刊○○○○が報じる

全国のカルト教団特集のうちの一つ。

背筋 [2023] 『某月刊誌 2000年8月号掲載 「辺境で見た異端、カルト教団潜入レポート」』 p.291

1998年5月 某月刊誌 1998年5月号掲載 「新種UMA ホワイトマンを発見!」

鳥取在住大手企業に勤めるHさん(35)が●●●●●にあるキャンプ場に行った時の体験談。

背筋 [2023] 『某月刊誌 1998年5月号掲載 「新種UMA ホワイトマンを発見!」』 p.147

1999年 背筋、交通事故で一人息子を亡くし、夫とも離婚する

背筋がスピリチュアルスペースへの潜入の前年のことである。

背筋 [2023] 『某月刊誌 2000年8月号掲載 「辺境で見た異端、カルト教団潜入レポート」』 p.291

1999年 赤い女の子供あきらくんが自殺する

赤い女の子供あきらくんが自殺する。9

背筋 [2023] 『某月刊誌 2000年8月号掲載 「辺境で見た異端、カルト教団潜入レポート」』 p.291

2000年8月 某月刊誌 2000年8月号掲載 「辺境で見た異端、カルト教団潜入レポート」

信者の自殺が相次いでいるという噂から、その闇を暴くべく、背筋が新興宗教「スピリチュアルスペース」への潜入する。
施設内で振舞われたご飯は味がしなかった。
入信の意向を教団に伝えた背筋はある部屋に連れていかれる。
その部屋の中央には木で組まれた台があり、しめ縄をまかれた大きな石が載っていた。
儀式を観ていた背筋はめまいがして倒れる。
後日、関西在住のライターが現地へ直接足を運ぶも、施設の建物は無人となっていて、大きな石も見当たらなかった。10
この日以降例の施設は廃墟となり、2002年少し前に保養所になる。

背筋 [2023] 『某月刊誌 2000年8月号掲載 「辺境で見た異端、カルト教団潜入レポート」』 p.291

背筋が目撃したスピリチュアルスペースの修行の部屋の俯瞰図を記す。

時期不明 電波女から出版社に手紙が送られてくる

4通目を送ったあと自殺したものと思われる。

背筋 [2023] 『読者からの手紙 3』 p.237

2000年 赤い女自宅(札屋敷)にて自殺

赤い女が息子を追って高みへ向かう。

背筋 [2023] 『インタビューのテープ起こし 3』 p.255

時期不明 ある手紙が社屋ポストへ直接投函される

呪いが電波を通して、広がっていく事が記されている。
差出人は不明。赤い女ではないことがうかがえる。11

背筋 [2023] 『読者からの手紙 2』 p.159

2002年 関西の名門私立R中学校の集団ヒステリー事件

山からの問いかけに、学級委員の女の子が応答する。
異様に大きくて白い裸の足を目撃する。
学級委員は数ヶ月後自殺。遺体を入れる棺桶はぴっちりと閉じられていて、顔を確認できなかった。12

背筋 [2023] 『某月刊誌 2006年4月号掲載 「林間学校ヒステリー事件の真相」』 p.25

2003年 埼玉一家行方不明事件

埼玉県川越市で都内勤務Eさん(38)とその妻(36)、長女(7)、次女(3)が一夜のうちに姿を消す。

背筋 [2023] 『某月刊誌 2008年7月号掲載 「謎のシール、その正体に迫る!」』 p.105

2003年 『学校のこわい話 第2巻』初版発行

「第一章 学校の七ふしぎ」より一部抜粋
「下校のチャイム」
17時になるチャイムがときどき3分遅れて鳴る。13
「あきおくん」
あきおくんと友達になると食べられる。

背筋 [2023] 『「学校のこわい話」シリーズ』 p.211

2004年8月鳥取在住の女子大生とその彼氏、男友達の三人で●●●●●に肝試しに行く

幽霊団地、幽霊屋敷にいったのち、ダムに向かう。
山の西側から東側へ向かう山道ですれ違った対向車の男の運転手と目が合う。
後日、女子大生がいたるところでその男を見かけるようになる。
夢の中で●●●●●の山や、笑顔で大きな口を開ける男を見るようになる。14

背筋 [2023] 『読者からの手紙 1』 p.43

2004年10月5日 月刊〇〇〇〇編集部宛てに鳥取在住の女子大生から手紙が届く

鳥取在住の女子大生からの手紙。

背筋 [2023] 『読者からの手紙 1』 p.43

2005年5月 ZDKsJPWc0がバイカーのブログを読む

バイカーがブログの記事をすべて削除する。
バイカーがブログに「あ」という写真だらけの記事をあげる。15
山の神社の祠の中に人形が詰め込まれている写真を見つける。

背筋 [2023] 『ネット収集情報 2』 p.67

2006年4月 某月刊誌 2006年4月号掲載 「林間学校ヒステリー事件の真相」

当時中学2年生、この事件を目の当たりにしたUさんの証言。

2007年『学校のこわい話 第6巻』初版発行

「第三章 学校のまわりのこわい話」より一部抜粋
「ジャンプ女」
T君が自宅でジャンプ女を見かける。母に助けを求めると母が先ほどのジャンプ女になっていた。
「あきとくんの電話ボックス」
Rちゃんが古い電話ボックスからあきとくんへお願いごとをする。あきとくんに食べられる。16

背筋 [2023] 『「学校のこわい話」シリーズ』 p.211

2007年7月 某月刊誌 2008年7月号掲載 「謎のシール、その正体に迫る!」

シールを下記に添付する。

Oさん(52歳、男性、ガードマン)の証言
彼が派遣されていたビルの壁面(及び付近の公園や飲食店)にシールが貼られる。
剝がしても剝がしても毎日貼られ続ける。
誰もシールを貼っている人間を見たことがない。監視カメラを設置しても犯人の特定はできなかった。
ビルの2階の窓にシールが貼られる。17

Tさん(48歳、男性、新聞記者)の証言
埼玉で失踪した家族の家の現場は、食べかけの朝食、おびただしい数の正方形の束、ペン、が残され、家族四人でシールを描いていたものと思われる。

Fさん(20歳、女性、大学生)の証言
彼女が女子高生だったころ、シール(四隅に書かれた文字は了)の画像がチェーンメールで送られてくる。18
メールの文章は『見つけてくださってありがとうございます。みなさんに広めていただければ素敵なお友達ができます。かわいい子です。』
彼女はすぐメールを削除した。

Kさん(45歳、女性、主婦)の証言
彼女の友人であるRさんがシール探しに没頭する。
休日に突然●●●●●に行くと出かけ、ダムから飛び降りて自殺する。
Rさんが実家から持ってきたという鏡台の鏡には、シールがびっしり貼られていた。19
それを確認したRさんの旦那は笑っていた。そののち旦那はどこかに引っ越した。

背筋 [2023] 『某月刊誌 2008年7月号掲載 「謎のシール、その正体に迫る!」』 p.105

本作に登場するシールは2パターン存在する。

呪いのシール

2007年7月21日 国土交通省よりダムカードが配布され始める

ダムカードは、国土交通省および独立行政法人水資源機構が管理するダムなどで配布されているカード型式のパンフレット。
(ダムカードの配布時期を知りたかった為、記載した)

「ダムカード」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%A0%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89

2009年8月 某月刊誌 2009年8月号掲載 読者投稿欄

●●●●●在住の14歳マーちゃんが読者投稿欄にジャンプ女の件投稿する。

背筋 [2023] 『某月刊誌 2009年8月号掲載 読者投稿欄 』 p.59

2010年5月 某月刊誌 2010年5月号掲載 短編「心霊写真」

ファッション誌のベテラン編集者Aさんの証言。
半年前から担当になったカメラマンのBさんが撮る写真の53番目は人間の口の中のが写された写真に入れ替わる。
Bさんが以前ダム見学ツアーの取材で●●●●●のダムを訪れた際、ロッカー内にフランス人形が置いてあるのを撮影して以降その現象が起こる。20

背筋 [2023] 『某月刊誌 2010年5月号掲載 短編「心霊写真」』 p.177

2010年5月17日 ネット掲示板『洒落にならない怖い話』へZDKsJPWc0による書き込み

バイカーのブログの話。

背筋 [2023] 『ネット収集情報 2』 p.67

2011年1月15日 関西軍曹(H7cKvHk1c)お札屋敷へ

息子を自殺でなくした母がこの家で自殺する。
家にあった書籍類から、母が宗教に傾倒していたことがわかる。
和室の畳にシミがあり、畳をどかすとしめ縄がまかれた岩がみつかる。
関西軍曹によりシール(四隅の字は了)の画像がupされる。21

背筋 [2023] 『ネット収集情報 3』 p.163

2011年夏 男性のA,Bさん、女性のCさんの三人で夜景を見にドライブへ

地元では有名な夜景スポットであり、峠道の途中に広場があって、そこからふもとの夜景を一望できる。
広場の脇にあるあずまやのテーブルに石がのせられ、それを取り囲むように数人の人間が飛び跳ねながら呪文を唱えていた。
Bがおかしくなる。そののちBは学外の怪しげなスピリチュアルサークルに入る。
Bとは疎遠になり、AはCから告白を受け交際を始める。

背筋 [2023] 『某月刊誌 2012年10月発行掲載 短編「見えたもの」』 p.223

2012年3月4日 月刊〇〇〇〇元編集者K、都内大学で心理学を専攻する学生Aさんにインタビューをする

卒業論文の実験中、ジャンプ女に憑りつかれる。
Aさん(心理学専攻)が知り合いのライターであるFさんに助けを求める。FさんはAさんにKさんを紹介する。

背筋 [2023] 『インタビューのテープ起こし 1』 p.71

2012年3月末 Aさん、Kさんに紹介してもらったお寺に除霊依頼をしに行く

和尚さんに、Aさん(心理学専攻)に憑いているのは女ではなく、女が呼び寄せた一つ上の次元の怪異22であると診断される。
Aさん、和尚さんからのアドバイスにより生き物を飼う。

背筋 [2023] 『インタビューのテープ起こし 2』 p.135

2012年5月 Aさん社会人として働きだして一か月後、男の子のようなものが見えるようになる

Aさん(心理学専攻)は男の子に追いかけられるようになるが、なんとか今まで生きてこれた。23

背筋 [2023] 『インタビューのテープ起こし 2』 p.135

2012年10月 某月刊誌 2012年10月発行掲載 短編「見えたもの」 Sの引継ぎファイル『石について-1』

関西の大学に通うAさんの証言。

背筋 [2023] 『某月刊誌 2012年10月発行掲載 短編「見えたもの」』 p.223

2014年3月 某月刊誌 2014年3月号掲載 短編「待っている」

70歳目前で同い年の夫を亡くしたAさん(40)の母が不動産屋で●●●●●にあるマンション(5号棟3階の部屋)に引っ越しをする。
5号棟で飛び降り自殺がある。今回が初めてでない、毎年のように人が5号棟で飛び降り自殺している。
自殺する人はマンションの住人でなく、遠方から来る人が大半である。
母は自室の窓際でニコニコ人間が飛び降り自殺をするのを待っている。

背筋 [2023] 『某月刊誌 2014年3月号掲載 短編「待っている」』 p.89

2014年3月 「待っている」掲載前原稿

Aさんの母は岡山から●●●●●にあるマンションに引っ越しをした。
Aさんが母から振舞われた肉じゃがは味がしなかった。24
デザートには柿があると嘘をつかれる。

背筋 [2023] 『「待っている」掲載前原稿』 p.95

2014年8月 長崎で会社員をしているAさんが地元で、高校の同窓会に参加する

カラオケオールでみんなが疲れて寝てしまったあと、Aさん(長崎の会社員)はカラオケルームのモニターに奇妙な映像が映るのを目撃する。
それはたくさんの人が台座に載せられた石を囲んで立ってこちらを見ている動画であった。
そののち朝4時ごろ参加者全員の携帯に同時に同じ電話番号から着信がある。
発信元を調べると関東の老人ホームからであった。

背筋 [2023] 『某月刊誌 2014年12月発行掲載 短編「カラオケ」』 p.243

2014年12月 某月刊誌 2014年12月発行掲載 短編「カラオケ」 Sの引継ぎファイル『石について-2』

長崎で会社員をしているAさんの証言。25

背筋 [2023] 『某月刊誌 2014年12月発行掲載 短編「カラオケ」』 p.243

2015年2月 某月刊誌 2015年2月号掲載 短編「賃貸物件」

福岡の小倉でフリーランスのデザイナーをしているAさんがかつて東京にいたとき、田舎暮らしにあこがれて●●●●●への移住を計画する。
賃貸物件検索サイトで●●●●●の物件を探していたとき、物件画像に暗がりに立っている女の画像を発見する。
後日、職場で印刷をした際、印刷物の中の1枚に例の女が両手でバンザイをした状態で写りこむ。26

背筋 [2023] 『某月刊誌 2015年2月号掲載 短編「賃貸物件」』 p.61

2016年7月 Aさんとサークル仲間の家にみんなで集まって飲み会をひらく

かつて●●●●●の小学校に一時期通っていた友人から「ましろさま」という遊びを教えてもらう
Aさん(ロングヘア)の彼氏がましろさまをしてその模様を動画撮影し、SNSにupする。

背筋 [2023] 『某月刊誌別冊 2018年7月号掲載 短編「浮気」』 p.195

2016年8月 Aさん彼氏おかしくなる

Aさん(ロングヘア)、彼氏に髪を切られる。そののち彼氏失踪。27

背筋 [2023] 『某月刊誌別冊 2018年7月号掲載 短編「浮気」』 p.195

2016年8月18日 ●●●●●のダムで長野県在住〇さん(35)と娘(12)が溺死体で見つかる

被疑者は夫(35)。28

背筋 [2023] 『ネット収集情報 1』 p.39

2017年7月 某月刊誌別冊 2017年7月発行掲載 短編「おかしな書き込み」

都内在住24歳会社員Aさんが、AVを無断掲載しているアダルトサイトでおかしな書き込みを発見する。29

背筋 [2023] 『某月刊誌別冊 2017年7月発行掲載 短編「おかしな書き込み」』 p.3

2018年7月 某月刊誌別冊 2018年7月号掲載 短編「浮気」

Aさん(ロングヘア)の証言。

背筋 [2023] 『某月刊誌別冊 2018年7月号掲載 短編「浮気」』 p.195

2018年10月19日 『不審者情報データ掲示板』への書き込み

50代男性、坊主、肥満体系、徒歩、ブルーのジャンパー「山へ連れて行ってあげる」と小学生女児へ声掛け。

背筋 [2023] 『ネット収集情報 1』 p.39

2019年 高円寺のホラーオフ会で背筋と小沢君初対面

当時大学2年生の小沢君、ホラー好きな彼女と参加する。30

背筋 [2023] 『『近畿地方のある場所について』1 』 p.17

2019年秋ごろ 当時大学2年生だった小沢君の友人Eさんがビジネスサークルに傾倒する

Eさんが参加したサークルのパーティでプロジェクターで鳥居の絵が映し出され、呪文が唱えられる。31
ある日の朝、Eさんの自宅の玄関のドアの外側に例のシールが貼られる。

背筋 [2023] 『『近畿地方のある場所について』 3』 p.119

2019年11月14日~21日 「無料オンライン医師相談サービス『おしえて!ドクター』」に50代女性が書き込み

大学生の息子がちょうど三か月前、●●●●●にある保養所廃墟に肝試しに行って以降、字が浮き上がって見える症状がではじめる。
お隣さんのポストに手紙を変な手紙を入れるようになるが、相談者にはその記憶がない。32

背筋 [2023] 『ネット収集情報 3』 p.163

2020年1月16日 国内で初めてのコロナウイルス感染が確認される

国内初の感染者確認
2020年1月16日、国内で感染者が初めて確認された。中国・武漢から帰国した神奈川県の男性。
(コロナウイルスの国内での感染時期を知りたかった為、記載した)

「新型コロナウイルス感染 日本の1年」https://www.asahi.com/special/corona/japan-yearly/

2020年5月27日 『ゆきひろの心スポ凸ちゃんねる』配信

ゆきひろ、●●●●●にあるトンネルにて配信を行う。
トンネル付近で笑顔で手を振りながら近寄ってくる何かに遭遇し、気がふれる。

背筋 [2023] 『ネット収集情報 1』 p.39

2020年5月27日 『不審者情報データ掲示板』への書き込み

20代の男、金髪、やせ型、車、通行中の女性に対して車の窓からスマホを向けて「山へ行きませんか」の声掛け。33

背筋 [2023] 『ネット収集情報 1』 p.39

2021年6月3日 『不審者情報データ掲示板』への書き込み

40代男性、男性、短髪、中肉中背、徒歩、スーツ、自転車に乗っていた女性に対して「山へ行こうよ」と声掛け、追っかけ。

背筋 [2023] 『ネット収集情報 1』 p.39

2022年4月 小沢君出版社に就職

オカルト専門誌MOOK別冊〇〇〇〇の次号分担当者になる。

背筋 [2023] 『『近畿地方のある場所について』1 』 p.17

2022年4月~ 中野の居酒屋で背筋、小沢君再開

小沢君、リモートワークの合間をぬって、会社の書庫にて、月刊誌だったころの〇〇〇〇のバックナンバーをあさる。
小沢君、このころはまだ●●●●●について認知していない。

背筋 [2023] 『『近畿地方のある場所について』1 』 p.17

一か月後 背筋、小沢君、神保町のカフェで打合せ

背筋、別冊〇〇〇〇に寄稿の依頼を受ける。
小沢君、●●●●●の山の西側にダム、廃屋(宗教施設、保養所)、トンネル、東側に幽霊団地(自殺マンション)、幽霊屋敷(お札屋敷)があることを認知
なおこの時点で背筋は山の東側に心霊スポットがあることを知っている。●●●●●に対して既知である。
また、小沢君は小さいころ山の西側にあるキャンプ場に行ったことがあるが、この時点ではそのキャンプ場で怪奇現象が起きていることを彼は知らない。

背筋 [2023] 『『近畿地方のある場所について』 2』 p.51

背筋、月刊〇〇〇〇元編集者Kにインタビューをする

かつて〇〇〇〇が月刊誌だったころの編集部員であるKさんに背筋がインタビューをする。
当時月刊〇〇〇〇の編集長だったSが辞めたことにより月刊〇〇〇〇は休刊になった。34
都内大学で心理学を専攻する学生Aさんが実験に使っていた動画はインターネットの世界では有名なものであった。
様々なホラー映画や動画を切り抜いて作ったものだが、1つ(2カット1シーン)だけ素人が撮ったであろう部分が混ざっていることがインターネットの特定班により明らかになった。
それは5と書かれた建物が映るカットと、女が上を見上げながらジャンプしているカットである。35

背筋 [2023] 『インタビューのテープ起こし 1』 p.71

半年後 背筋、小沢君、リモートで打合せ

小沢君が今回の一連の怪異を『山へ誘うモノ』『赤い女』『呪いのシール』に分類する。

背筋 [2023] 『『近畿地方のある場所について』 3』 p.119

背筋、ライターF経由でにAさんにインタビューをする

当時Aさんは、自身の体験をエンターテインメントに昇華させようとしているKさんに対してあまり良く思っていなかった。
今現在も男の子はみえるが、Aさんは元気に生活していて、結婚して、来年には子供が生まれるそうだ。36

背筋 [2023] 『インタビューのテープ起こし 2』 p.135

時期不明 S(月刊〇〇〇〇元編集長)、神奈川県の老人ホーム「とこしえスペース」の元従業員の女性にインタビューする Sの引継ぎファイル『石について-3』

施設長が●●●●●から持ってきた石を台座にのせてレクリエーションルームに飾った。
施設で老衰で亡くなった老人が3人いるが、3人ともこの石に深い興味を持っていた。
老人4人で施設職員一人を羽交い絞めにし、その石に頭を打ち付けて殺害したあと、一人ずつ順番に自分で頭を石に打ち付けて死んだ。

背筋 [2023] 『インタビューのテープ起こし 4』 p.273

時期不明 S(月刊〇〇〇〇元編集長)、●●●●●の女性にインタビューする Sの引継ぎファイル『石について-4』

50年ほど前は神社には神主がいた。
神社の祠には石(ましら)が祭ってある。
女性の父(老人)にましら様について話を聞けることになった。

背筋 [2023] 『インタビューのテープ起こし 5』 p.303

時期不明 S(月刊〇〇〇〇元編集長)、●●●●●の女性の父にインタビューする Sの引継ぎファイル『石について-5』

●●●●●の女性の父(老人)の証言。

背筋 [2023] 『インタビューのテープ起こし 6』 p.319

時期不明 神社由緒看板 S(月刊〇〇〇〇元編集長)、廃神社の茂みにある看板を発見するが、風化、何者かに破壊、落書きにより判読可能箇所のみ記載 Sの引継ぎファイル『石について-6』

ご神体は詳細が不明である。
伝説(伝承)によると、天から降りてきた鬼に人(女)が喰い殺された。
それを鎮めるために、
五….三日に鎮めるための祭り(生贄を捧げる?)が開かれる。

背筋 [2023] 『神社由緒看板』 p.327

時期不明 KからSが退職する際に連携のあった引き継ぎデータが、背筋に送られてくる37

K(月刊〇〇〇〇元編集者)は退職した出版社で働いている人事部の同期にS(月刊〇〇〇〇元編集長)について色々聞いた。
Sが退職した理由は、突然心の病を患った妻の介護の為であった。
Sは今も行方知らず。

背筋 [2023] 『Kからのメール』 p.119

神保町にて小沢君との会合

山へ誘うモノは女性を嫁にすることが目的。嫁を差し出させる為の男性や、自らが嫁になった女性をダムへ飛び込ませているのではなかろうか。
「浮気」「新種UMAホワイトマンを発見!」「待っている」のように当事者が助かる場合もある。
小学校ではやっていた遊びも身代わりが関係している。38

背筋 [2023] 『『近畿地方のある場所について』〇4』 p.251

背筋、かつてO(月刊〇〇〇〇元編集者)と共に児童書をつくった女性作家にインタビューをする

女性作家はOと共に『学校のこわい話』を執筆する際、●●●●●の小学校に取材をしに行く。
当時11歳だったあきらくんが公園の木で首を吊って自殺。母親はその1年後に自殺する。
母親はこの1年の間に、宗教に傾倒し、町のいたるところにシールを貼る。
ましろさんに見つかってしまった他の生徒があきらくんを身代わりにしたのではないかという噂。
あきらくんが自殺した公園で女の子が自殺、あきらくんと友達になったのではないか。
知り合いの家族、出版系のデザイナーをしている知り合いが、奥さんと娘さんをダムに突き落として殺した。
背筋が離婚していることが分かる。

背筋 [2023] 『インタビューのテープ起こし 3』 p.255

背筋、神保町のカフェで小沢君と会合

赤い女は積極的に当事者に近づいてくる。
山へ誘うモノとあきらくんは大きな口を開けているという点で似ている。
あきらくんは団地から飛び降りさせる。
山へ誘うモノはダムから飛び降りさせる。

背筋 [2023] 『『近畿地方のある場所について』〇〇4』 p.283

背筋、小沢君に呼び出され神保町のカフェへ行く

小沢君に背筋が2000年に書いた記事のことで詰められる。
背筋の記憶がない。それでも今自分が無事なのは、山へ誘うモノは出産していない女性を狙っているのではないだろうか
小沢君は女性に山へ行こうと誘っている。

背筋 [2023] 『『近畿地方のある場所について』 〇〇〇4』 p.309

二か月後 小沢君の死体が●●●●●のダムで女性の死体39と共に見つかる

女性は面識なしである。

背筋 [2023] 『『近畿地方のある場所について』 〇〇〇4』 p.309

2023年 『近畿地方のある場所について』5

小沢君とリモートで打合せをした日からずっとジャンプ女がみてていた。耳元でささやかれてた。
読者を身代わりにしても助かりたかった背筋は、小沢君を探していると嘘をついて、我々読者に向けて呪いの拡散を図った。
最終的に女には許されたが、部屋の隅に男の子が立つようになった。

背筋 [2023] 『『近畿地方のある場所について』 5』 p.329

怪異について

作中初期で小沢君が切り分けた三種の怪異

下記に物語に登場する怪異を大きく三つに分けた上で、考察する。
大きく分けると「山へ誘うモノ」「赤い女」「呪いのシール」である。
シールだけ少し異色だが、山へ誘うモノは山の西側を、赤い女は山の東側を縄張りとしている点が多く描かれている気はする。呪いのシールはこの2つの怪異を仲立ちする存在(もとは山へ誘うモノが発端ではるが)である。

山へ誘うモノ

明治時代よりも以前、●●●●●に舞い降りた鬼を起源とする。
この人を喰らう鬼を鎮める為に、●●●●●の山に神社を建立する。
明治時代、人々の信仰がなくなり、鬼は腹を立てたのだろうか。
●●●●●の村の青年まさるに憑りつき、神社に祀られていた石を自宅に持ち出す。
(もしくはまさるが石を持ち出した事により鬼が腹をたてたか)
まさるが殺人事件を起こした後、石は神社の祠へと戻され、村人たちは柿や人形を供える。
時代が移り変わり、誰もが鬼を忘れ去った頃、再び鬼は腹をたて動き出す。
真っ白で巨大な体躯、猿を思わせる姿。
●●●●●の山の西側を住処とし、そこを訪れる人間達にある種の呪いをかける。
山におびき出し、ダムに飛び込みをさせるというのがこの怪異の特徴である。
呪いにかかった人間達、主に男性は、女性を●●●●●の山に誘う。
呪いを回避する方法は、人形を供えることであり、神社の祠には人形がみっちりと詰まっている。

赤い女

彼女は母であった。
息子のあきらくんが自殺をしてしまったことを起因とし、宗教にのめりこむようになる。
熱心な宗教活動むなしく、彼女は頭が変になり、ついには施設の石を●●●●●の東側にある自宅の和室に持ち込み、その石の上で首を吊り自殺する。
彼女は怪異になったのだ。
彼女は生前宗教活動で行ったシールに(四隅の文字を「女」から「了」に変える)アレンジを加えて、全国に拡散した。そしてそのシールを見た者、一定以上興味を示した者は彼女の呪いにかかり、その者もまたシールを作成し、呪いをどんどん拡散させるのだ。
全ての目的は呪いのシールからあきらくんを蘇生させることである。
やがて、彼女はあきらくんという怪異を生み出してしまう。
皮肉にも、それはあきらくんに似た、あきらくんではないものであった。
というよりは、悪魔、神、といった怪異の一段階上の存在と言った方がいいであろう。
彼は山の怪異の特徴を多少引き継いでおり、客体の命を奪うことを目的として活動する。

呪いのシール

●●●●●の西側に本拠地を構える新興宗教「スピリチュアルスペース」。
その宗教は●●●●●の山の神社から施設に持ち込まれた石を崇拝対象とし、日々高みへいけるように修行を行う。
おそらくこの宗教団体の発起人は山へ誘うモノに見初められたものである。
宗教団体の本来の目的は、たくさんの女性を入信させ、シールの作成をさせることである。そしてその家族には宗教の勧誘をさせるのである。
シールをいたるところに貼りつけ、より多くの人間に目撃させることで、たくさんの人間を山に誘うのである。
信者である彼らが使う「くぐる」という言葉には石に頭をぶつけて自殺したり、ダムへ飛び込むという意味がある。
2000年以降●●●●●の本拠地は無人となったが、信者は全国に分布し、教義を広めているのである。

『近畿地方のある場所について』4について

作中に登場する様々な資料には『近畿地方のある場所について』の4番目が5つ登場する。
背筋の発言からも、彼女はこの一連の資料をまとめる際に「近畿地方のある場所についてはこれでおしまいです」というように何回も書いて、我々読者に最後まで読ませないよう彼女なりの優しさがみえる。
それは本当だと思うが、その根拠として下記のようなことが言える。
「近畿地方のある場所について」と「4」の間がそれぞれ異なる。(〇は空白を表す)
A「近畿地方のある場所について 4」p.209 すぐ終わらせる
B「近畿地方のある場所について〇〇〇〇 4」p.235 すぐ終わらせる
C「近畿地方のある場所について 〇4」p.251 色々記載する
D「近畿地方のある場所について 〇〇4」p.283 色々記載する
E「近畿地方のある場所について 〇〇〇4」p.309 色々記載する
空白が入るのは、背筋がこの資料(ファイル)をPCで作成する際に、タイトルのファイル名の重複を避け、ファイル名に空白を1つずつ足し、これらのファイルを作成しているからである。このファイル数から背筋の逡巡が垣間見える。
そして、これらのファイルを空白の少ない(背筋が作成した)順に並べると、下記になる。
A「近畿地方のある場所について 4」p.209 すぐ終わらせる
C「近畿地方のある場所について 〇4」p.251 色々記載する
D「近畿地方のある場所について 〇〇4」p.283 色々記載する
E「近畿地方のある場所について 〇〇〇4」p.309 色々記載する
B「近畿地方のある場所について〇〇〇〇 4」p.235 すぐ終わらせる
資料をEまで作り終えた背筋が、最後の最後で良心が働き、Bのドキュメントそのあと作成し、我々に資料を見せる際にAの次に持ってきて、二回連続で注意を促したのである。

読者からの手紙 2の差出人

今現在も僕の中で「読者からの手紙 2」の差出人が誰なのかという謎が残っている。
最初は山へ誘うモノが書いたのかと思った。しかし、「きのうも西からひびくおとがうるさく 耳 をかしましいのはサルのなきごえかと思ふ」など、山へ誘うモノを否定する文章が散見される。また、「集団でみはる、ことしかできないといふのに!」と、宗教の信者や、その他見初められた男女のことも、同じく否定してるように見受けられる。
「じめんのもっとしたの子たちはないている」という箇所から、●●●●●に、鬼が舞い降りるよりももっともっと昔から住む、赤い女、山へ誘うモノ、その他の呪われた人間達以外の何か神、もしくは怪異に近い存在がこの状況を嘆いているのか、と考えたりもした。いずれにしても謎は深まるばかりである。

呪文について

A「『近畿地方のある場所について』 3」とB「辺境で見た異端、カルト教団潜入レポート」には呪文が登場する。
それぞれの呪文を書きだすと以下である。
A
「るきえむどじえうずめ」
「めしたがははあおえおいずめみおちくど」
「ぞぎつふいえはもすもおおえ」
「あいるずめそうづじえみふおぽれるとずえ」
「どいーしめこよいあすぴくそ」
「すえいみくるるるえおきむなし」
「あおいえふずもづいせろおあぶるいそ」
「ちめみふずろいてとっつすもいてとぶなるいけこみてる」
「ふえおいえぷし」
「りつふいととみなおいおえるつ」
「しこえりぶついとてみず」


B
「るきえましらむどじえうずめ」
「めしたがははあおえましらおいずめみおちくど」
「ぞぎつましらふいえはもすもおおえ」
「あいるずめそましらうづじえみふおぽれるとずえ」
「どいーしましらめこよいあすぴくそ」
「すえいみくるるるえましらおきむなし」
「あおいえふずもづいせろましらおあぶるいそ」
「ちめみふずろいてとっつすもいてとぶなるましらいけこみてる」
「ふえおいえぷしましら」
「りましらつふいととみなおいおえるつ」
「ましらしこえりぶついとてみず」

そもそも、これらの呪文の意味自体は意味が分からないが、
上記A,Bの違いは「ましら」というワードが入っているかいないかという点に違いがある。
Aは小沢君の記憶、Bは背筋が宗教施設に潜入した際に録音したものである。
この呪文を記憶している時点で小沢君はおかしくなっているのだが、そうであれば、小沢君の記憶のほうに「ましら」が入っている方が自然である。なぜ、「ましら」という単語が彼の記憶から消えていたのだろうか、もしくは、AのほうがBよりも20年くらい後の話である(かつ●●●●●の山の西側に存在した宗教施設はB時点では廃墟になっている)為、呪文自体が変わったのであろうか。
いずれにしても謎である。

5と3という数字

自殺マンション5号棟、あきらくんが自殺した時間夕方5時3分、カメラマンBさんの53番目に写る口内の写真。
作中には「5」「3」という数字がよく出てくる。そして、Sの引継ぎファイル『石について-6』の神社由緒看板にも「五…三日…」と記述がある。おそらく5月3日、5月13日、5月23日のいずれかの日にちに、天から舞い降りた鬼を鎮めるための祭りが執り行われていた歴史を指すのではなかろうか。看板の記述の五と三の間には空白があり、どの日程かを判別するには至らないが、5と3という数字ばかりでてきていることから、この祭りの開催日は5月3日である可能性が高い。しかし、それが分かっても、その祭りの日程と、今回起きた5,3が関係する怪異や事象との関係性が見られない為、どこか歯がゆく合点がいかない。

まとめ

はるか昔に、この地域では鬼が舞い降りて、人を喰ったという。
本当にそうなのだろうか。
鬼はいなかったのかもしれない。それはある時代では猿だったり、ある時代ではまさるだったりしたのかもしれない。ただ1つ言えるのは●●●●●で、恐れられ、奉られた何かがいたということである。何かが畏怖の念で人々から祀られると、それは神にも怪異にもなりうるということである。
今作では、山へ誘うモノが、人間を蝕み、あきらくんを自殺に追い込み、赤い女が新たな怪異を産み落とす。
それは山へ誘うモノ自身も想像できなかったのではなかろうか。そもそもこういった物事の良し悪しの尺度を怪異が持ち合わせていないのは、あきらくんが悪魔として怪異になったことからも、自明の理ではあるが。

本作、最後までとても楽しく読ませていただいた。
映画化もしたということで、ぜひ劇場でこの作品を堪能したい。

そして皆様、このブログを見つけてくださってありがとうございます。


  1. 「インタビューのテープ起こし 5」より
    S(月刊〇〇〇〇元編集長)と老人の会話で、Sが例の神社は急ごしらえで建てたものには見えなかったと指摘するも、老人があからさまに難色を示した為、明治時代より前に神社が建立されたと推定。 ↩︎
  2. 老人曰くまさるが凶器につかった黒い石はここら辺では手に入らない石であった。
    「※1」記載の老人の虚言が事実であれば、おそらく、山へ誘うモノに見初められたまさるが、元々神社の祠に祀られていた石を、持ち出したのではなかろうか。 ↩︎
  3. 「取材資料」より
    Kちゃんの本名が小林添子であると分かる。 ↩︎
  4. 事件当時の状況を鑑みて、Kちゃん誘拐の犯人は身内である叔父Mさんである可能性は高い。 ↩︎
  5. 山へ誘うモノの呪いを解除する為の方法として人形などを生贄として供える点が、子供たちの遊びに濃厚に表れている。
    なぜBちゃんが出発したのが深夜なのだろうか。
    この場合猫は生贄として捧げる段階で死んでいる可能性が高いが、生贄としての効力があるのだろうか。 ↩︎
  6. 死んでいない根拠は提示しているが、生きていない根拠は提示していない。 ↩︎
  7. この段階で、●●●●●の山の神社の祠にあった石は教団施設に運び込まれている。
    高みへいくとは死ぬことをさすと考えられるが、これは神社の詳細不明のご神体である鬼(石)が、天から舞い降りた事と何か関係がありそうではある。 ↩︎
  8. 昨年神社からご神体である石が持ち出された為、山へ誘うモノが目覚めてしまったと考えられる。 ↩︎
  9. そののち母(のちの赤い女)はスピリチュアルスペースへ入信し、高みへ行って息子に会うために修行を開始する。 ↩︎
  10. 赤い女が施設の石を自宅に運んだ可能性が高い。 ↩︎
  11. 時期については不明だが、赤い女があきらくんを生み出だした後である事はほぼ間違いないので、赤い女の自殺した日以降とする。 ↩︎
  12. 口を大きく開けていて、どうしても閉じることができなかったからか。 ↩︎
  13. あきらくんが自殺したのは17時3分であるである可能性が高い。 ↩︎
  14. 女子大生は自分の住所も書かずに手紙を送ってきたということか。
    また、この時点でマンションは「幽霊団地」、赤い女の自宅は「幽霊屋敷」と認知されていたということが分かる。 ↩︎
  15. この「あ」というのは取材資料にあったあきらくんの写真の「あ」と何か関係があるのだろうか。
    撮影したのがあきらくんなのか。 ↩︎
  16. あきと(ら)くんに呪われ、被呪者が自殺することを、「あきと(ら)くんに食べられる」と表現する。 ↩︎
  17. ジャンプ女がジャンプして二階の窓にシールを貼っていたとすれば、少し面白い。 ↩︎
  18. Fさんが女子高生だった頃には赤い女は怪異になっていた為、四隅が「了」であるシールを流行らせたのは赤い女ということで間違いなさそうである。 ↩︎
  19. 奥さんはダムから飛び降りた為、鏡台に貼られていたシールは、四隅が「女」であるシールである可能性が高い。 ↩︎
  20. このフランス人形は山へ誘うモノに対する供物なのか。 ↩︎
  21. 自殺したというのは、おそらくあきらくんとジャンプ女のことである。
    母はこの場所(岩の真上)で自殺したと推測できる。
    適宜指示をおくっていたAylg8wLmaはおそらくジャンプ女であろうか。 ↩︎
  22. おそらくあきらくんである。 ↩︎
  23. Aさんは四隅が「了」のシールを見ていない気がする。シールを媒介せずあきらくんに憑かれる場合もあることが分かる。 ↩︎
  24. なぜ味がしなかったのか、ぼけていたのか、おかしくなっていたのか。 ↩︎
  25. なぜ長崎のカラオケ店のモニターに怪異が映ったのかは不明。
    ●●●●●にあった石が関東の老人ホームに持ち出されたことで、呪いが全国に展開され始めたということか。 ↩︎
  26. なぜ女はAさんの実家に現れたのだろうか。実家は東京のはずである。これはより、怖さを助長させる為のスパイスか。 ↩︎
  27. 生贄の概念が登場するが、これは人形の代わりに人間の髪の毛を供物として捧げるという意味だろうか。 ↩︎
  28. 女性児童書作家の知り合いのデザイナー一家である。 ↩︎
  29. これはおそらく山へ誘うモノに見初められた男性による書き込みか。 ↩︎
  30. 小沢君と一緒にダムで発見された女性がこの人である可能性は無きにしも非ず。 ↩︎
  31. このエピソードは小沢君が背筋にリモートで説明している。
    彼が一字一句呪文を説明できるのはおかしい。この時点で彼はおかしくなっている?
    若しくは背筋がおかしくなっている。 ↩︎
  32. おそらくこの一家はS(月刊〇〇〇〇元編集長)一家である。 ↩︎
  33. 日付や時間を鑑みてこの不審者はゆきひろであると推測できる。 ↩︎
  34. 「ネット収集情報 3」より
    S(月刊〇〇〇〇元編集長)が出版社をやめた(月刊〇〇〇〇がなくなった)のは2019年12月以降と推測できる。詳細な時期は不明。奥さんが「無料オンライン医師相談サービス『おしえて!ドクター』」へ書き込みをしたあと、どのくらいでSが退職したかによるが、2022年4月に小沢君が出版社に入社した時にはすでにSは退職していたので、2020年から2022年の間であろうか。 ↩︎
  35. 首を吊って自殺したあきらくんを見つけた赤い女が、あきらくんを木から降ろそうと必死でジャンプするところを、あきらくん目線で映した映像である。呪いの動画にあきらくん自身が念写したものと考えられる。 ↩︎
  36. Aさんは今まで怪異による脅威を和尚さんからアドバイスされた生き物を飼うことで乗り越えてきた。
    Aさんが飼っていた様々な生き物いずれも不可思議な死を遂げており、現在買っているゴールデンレトリバーもそのうち死ぬことが暗に示されている。
    来年生まれる子供が「生き物を飼う」ことに値するかは不明。 ↩︎
  37. 背筋がKからSの引継ぎメールを受信した詳細な日時は不明だが、少なくとも2022年5月以降と推測できる。
    小沢君と中野で再会した一か月後の小沢君との会合の後(最速で2022年5月ごろ)、背筋はKと連絡を取っている為。 ↩︎
  38. 引用元「『近畿地方のある場所について』〇4」の〇とは空白を表す。
    「『近畿地方のある場所について 4」は5つあり、それぞれ「』」と「4」の間に長さの異なるスペースが存在する為、それを表現した。 ↩︎
  39. 小沢君が夜な夜な電話を掛けた女性の中で、誘いに乗ってきた女性か。 ↩︎
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この記事を書いた人

広義なお化けが好き
幼少期、アニメゲゲゲの鬼太郎第4期と出会い、異形を認識して以来
お化けの虜になる
大好きなお化けの記録媒体としてウラメシノハコをつくる

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